************** 神父様の言葉 ***************
皆様、暑い日が始まりました。お元気でしょうか。
ある国の王は本をたくさん持っていますが、死にたくなるとき、人生の終わりと思うときに読めば、生きる勇気がわいてくる言葉が載っている本を見つけることができません。そこで国中の人々に探してくれるように頼みました。見つけた人には100万円の賞金をつけるとも言いました。
これを聞いた王の護衛は「本を見つけることは難しいでしょう。人生を神に捧げている聖人ならできると思います。」と言い続けて話しました。「私が10歳の時、東の国から3人の宣教師が来ました。当時の王はあなたのお父様でした。私は3人の宣教師の世話をするように命じられ、 彼らのために働きました。4週間が過ぎ宣教師たちは仕事を終えて、国に帰る前に私にこう言いました。「私たちは宣教師です。人生を神に捧げています。お礼にあげるものは何もないけれど、親切に世話をしてくれたあなたに」と1枚の紙を出し、「死にたくなるとき、人生の終わりと思うときに読んでください」と渡してくださいました。
「私はお父様に20年、あなたに25年仕えてきましたが、死にたいと思ったことは一度もなかったので、その紙に書かれていることを読んだことはありません。」王は護衛にその紙を持ってくるように命じ、受け取ると指輪の中にしまいました。
それから3年後、私の国は隣国に攻められ、宮殿は焼かれ娘は敵の妻にされてしまいました。
王は馬に乗って逃げ、山の頂上に着きました。前を見れば深い谷底、後ろからは敵の軍隊が迫っています。 いよいよ人生の終わりと、指輪の中の紙を取り出し読みました。それは「いつか通り過ぎます。」とだけ書かれており、王は「いつか通り過ぎます。いつか通り過ぎます。」と、この言葉を夢中で繰り返し、どれほどの時間が経ったのか、ふと気がつくと周りにはだれもいませんでした。山を下りると森の人々は生きている王を見て、たいそう喜びました。力を得た王は再び敵に向かい勝利を得ました。
人々は冠を着けた王が行く道に花びらをまき、踊りながら新しい宮殿に案内しました。その様子を見ていた護衛は王に言いました。「王様、一つ言い忘れていました。喜び、幸せな時にもあの紙を読んでください。」 紙には「いつか通り過ぎます。」と書かれています。王は冠を取り人々と一緒に宮殿に向かいました。
人生にはさまざまな悩み、苦しみ、辛いこと、また、今世界を病に苦しくしている新型コロナウイルスも必ず通りすぎます。この世の幸せ、財産もずっと続くとは限りません。この世をお造りになった神様がくださる喜び、平和がいつも皆さま一人ひとりの上にありますようにお祈りしています。
イル神父